不動産(賃料滞納による建物明渡請求)事件の解決までの流れ

賃料滞納が発生した場合の明渡請求は、段階的なプロセスを経て進められます。適切な手順を踏むことで、法的リスクを最小限に抑えながら解決を図ることができます。


第1段階:任意交渉による解決の模索

状況確認
 まずは賃料滞納が確認された時点で、まず滞納の経緯と金額を正確に記録します。賃貸借契約書の内容確認、滞納期間の算定、延滞損害金の計算などを行い、法的根拠を整理します。この段階では、賃借人の事情を聞き取り、支払い能力や今後の見通しについて把握することも重要です。


交渉の開始
 法的手続に入る前に、まず当事者間での話し合いによる解決を試みます。分割払いや一部免除などの条件変更、または合意による明渡しなど、双方にとって負担の少ない解決方法を検討します。この段階で合意に至れば、時間的・経済的コストを大幅に削減できます。


催告と賃貸借契約の解除
 催告期間が経過しても賃料の支払いがない場合、賃貸借契約を解除します。ただし、滞納期間や金額が軽微な場合は、信頼関係の破綻が認められない可能性があるため、慎重な判断が求められます。解除通知も内容証明郵便で行い、法的効力を確実なものとします。
 任意交渉が不調に終わった場合、内容証明郵便により正式な催告を行います。賃料の支払いを求め、一定期間内に支払いがない場合は賃貸借契約を解除する旨を通知します。この催告は後の法的手続きにおいて重要な証拠となるため、適切な文面と送付方法で行う必要があります。

第2段階:明渡請求訴訟の提起

_契約解除後も賃借人が退去しない場合は、裁判所に明渡請求訴訟を提起します。訴訟では、賃貸借契約の成立、賃料滞納の事実、適法な契約解除などを立証する必要があります。相手方が争う場合は、双方の主張を整理し、証拠に基づいた審理が行われます。

第3段階:判決確定後の強制執行

_勝訴判決が確定しても賃借人が任意に退去しない場合は、強制執行手続きに移行します。執行官による現場調査、明渡しの催告、強制的な退去執行という流れで進められます。この段階では、賃借人の荷物の処理や費用負担など、実務的な問題も発生します。

解決に向けた総合的な視点

_明渡請求の解決には、通常3か月から1年程度、あるいはそれ以上の期間を要します。各段階で適切な判断を行い、法的手続と実務的な配慮のバランスを取ることが重要です。また、滞納賃料の回収可能性や、強制執行にかかる費用対効果も考慮し、最適な解決策を選択する必要があります。
 賃料滞納問題は、早期の対応と適切な手続により、より円滑な解決が期待できます。法的知識と豊富な実務経験に基づいた対応により、関係者全員にとって最良の結果を目指すことが可能です。